自己の生活体験からにじみ出る庶民的感覚、人間を愛し社会の不正を破しようというヒューマニズム、作品の雰囲気を形づくる素朴な自然的情趣、親しみ深く人に語りかける調子の平明な文章---壷井栄文学の質であるこれらの要素をふんだんに盛りこんだメルヘンの世界。「妙貞さんの萩の花」「柿の木のある家」「ヤッチャン」「あしたの風」「あたたかい右の手」「坂道」など12編。