神戸の海辺の町に「H」と呼ばれた少年がいた。父親は洋服の仕立て職人。母親は熱心なクリスチャン。二つ年下の妹の四人家族。Hが小学五年生のとき、戦争が始まった。父親がスパイ容疑で逮捕され、Hが大好きな映写技師のお兄ちゃんも、招集を逃れて自殺する。戦争の影が不気味に忍びよってくる。Hは何を見て何を感じたか? 戦争を子供の視点で描いた感動の超ベストセラー。
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中学生になったHは、軍事教官から「反抗的だ!」とマークされ、殺されそうになる。戦争は日々激しさを増し、空襲警報が連日のように鳴り響き、米軍機の猛爆で街は炎上する。その中を逃げまどうHと母親。昭和20年8月、やっと戦争が終わるが、暮らしの過酷さはその後もつづいた。”あの時代”、人々はどんな風に生きていたのか?『少年H』は鮮やかに”戦争の時代”を伝えてくれる。
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